「すみません、あなたはパパラッチですか?」
キング牧師国立記念碑の起工式で写真を撮っているときに話しかけて来た黒人の男の子がいた。
「パパラッチじゃないけれど、イベントとかの写真を撮っているんだよ」と言う風に説明しているうちに、何だかどんどん話がはずんでしまった。
「出身はどこですか?」と聞かれたので、「ジャパンだよ」と答えると、いきなり
「コンニチハ、ハジメマシテ。ボクノ ナマエ ハ ダニエル デス。」と流暢に自己紹介された。
そのあまりの流暢さに「どこで日本語を習ったの?」と聞くと、「学校と図書館」と言うではないか。何だかむしょうに嬉しくなった。
「どうして日本語を習いたいと思ったの?」と聞くと、「I like WAGASHI (和菓子)」というシブい答え。「パンケーキにピンクのストロベリーのクリームが入ってるヤツが一番の大好物なの」と(私:ピンクのストロベリーのクリームが入ったパンケーキ?饅頭??クレープ??)。
11歳のダニエルは日本に興味津々で、それはいろんなことを質問されました。「日本語の次に僕はモンゴル語をマスターしたいんだよ」と言うダニエル。11歳なのに頼もしい。
ここで出会った、ここで生まれ育った大人達(主に黒人)は、街から一歩も外へ出た事がない人たちが多い。アジア人と言えば中国人。中には私が中国人ではなく日本人だと言う事を伝えると「いったいぜんたい何が違うのよ?」と、無神経に、でもちょっと悔し紛れ的に、答える人もいた。
その中で、ここで生まれ育った11歳の彼が日本に、アジアに興味を持ってくれて、言語まで習っていることをとても嬉しく思った。ダニエルと一緒に来ていた黒人女性を差して「あの方、お母さん?」と聞くと、「ううん、学校の先生なんだ」と言う。課外授業として、キング牧師記念碑の起工式に来たんだろう。なんだか二重に嬉しくなった。
私と彼の会話がはずんでいるのを見た先生がニコニコ笑いながら、「あーら、あなたのご自慢の日本語で彼女にご挨拶していたのね」と誇らしげに言っていた。
コンピューターがないからEメールもできないという彼に名刺を渡して、「ここに電話番号が載っているからね」と言うと、「え、じゃぁ日本語を話したくなったら電話してもいいの?」と目をキラキラさせながら言う彼が愛おしくて、そのままずっとお話ししていたい気分になったよ。
「ドウモ アリガトウゴザイマシタ。サヨウナラ。」と、ペコリとお辞儀をする彼との別れを惜しみながら家路についた。
いつか電話がかかってきますように...