これはちょうど今日読み終わった本(しかも立ち読み)。賛成できる部分と、んんん?と思う部分も少しあったが、彼の指摘に賛同する読者も多いだろう。
アメリカのヒップホップ・カルチャーとその社会的・経済的・政治的影響、一昔前の世代とのジェネレーションギャップ、ヒップホップやラップが与える男女関係への影響(bitchやHoというスラングの浸透)、etc....これらをひとつの観点から批判するのではなく、いろいろな角度から見ている。これからこのヒップホップ・ジェネレーションが黒人コミュニティをポジティブに変えていくには何が必要かという洞察。
著者が引用している、Maulana Karenga氏のコメントをここに抜粋する。
「今の若者達は、我々(黒人)の宿命とも未来ともなりうる。若者達が黒人文化を大切にし、自分たちの文化にどっぷりつかり、先祖代々から受け継がれた伝統を次の世代に受け継ぐことができれば、彼らは我々の未来である。しかし、彼らが自らのブラックネスに背を向け、父親や母親を侮辱し、自分勝手な物語や音楽に自らを投げ入れ、実際に自分たちが社会に対する脅威であるとか、ただ単にネガティブなことばかりを語るだけで自分たちに未来があると感じているのであれば、彼らは我々の未来ではない。彼らは我々の宿命である。」
ヒップホップ・ジェネレーションの、いわゆる「ネガティブ」だとされる特徴(黒人同士の争い、物質主義、銃やドラッグやギャングが崇拝される傾向、など)を単に一方的に批判するだけでなく、それらは一昔前の世代の責任でもあり(アメリカの差別主義や貧困社会という要因は別として)、ヒップホップ・ジェネレーションの成功や業績は、次の世代がそれを基盤にできるような社会的な変化をもたらさない限り、黒人コミュニティにとって何の意味も持たなくなる、と指摘している。
ヒップホップ大好きな私だが、その物質主義的な傾向(これはブラックミュージックに限らずアメリカ全体、さらには今日の日本社会にも言える)と、ワンパターンさ(例えば、服装やブリンや車。PVでは必ずリム付きの車とほぁ〜がバックにいること)、など、そういう傾向に多少なりとも疲れていたところなので、この本は(少し古い世代のありがちな批判的な意見は多かったものの)ポイントをついているだけでなく、「今後何をすべきか?」という問題提起ともなっているので、若者達には特に是非読んでもらいたい一冊だと言える。